はじめに
どーも不定期更新のガジェットぺろぺろです
今回は、前回の記事の続きです
自宅にhyper-vで検証ラボを構築したのですが、ホストのミニPCを起動したままだと爆熱になる問題が発生(設置が戸建ての2階で、仕事中はエアコンなし)
そこで、ミニPCは必要なときだけ電源を入れて、使わないときは電源を切る。これを外出先から遠隔で実行できないかと試行錯誤した次第です。
前回の記事では、Synology NASを使って外出先からミニPC(Beelink SER5)をWake on LAN(WOL)で起動しようと試みたものの、スクリプト実行に苦戦したり、対応していない機能があったりであえなく失敗…。
どうしようか悩んでいたんですが___
「これは別の方法を考えねば」と頭を抱えていたところで、ふと思い出したのが——
そういえば、数年前に買ってずっと放置してたラズパイ(Raspberry Pi 4)があったな…
このラズパイ、当時は「Linuxの勉強やIoTっぽいことに挑戦してみたい!」と思って購入したものの、忙しさにかまけて箱に入れたまま放置。(仕事の検証でちょこっとは使ったけど)
いわゆる“積みガジェット”状態でした。

でも、今回のような「ちょっとした中継役」にはぴったり
しかもRaspberry PiならLinuxが動くし、自由度も高い。これは、もうこいつを有効活用するしかない
ということで今回のミッションは・・・
ラズパイを中継機として構成し、外出先から自宅のミニPCをWOLで起動できる環境をつくること!
これがうまくいけば、ミニPCを常時起動しておく必要なし。必要なときだけ外出先からスマートに電源を入れられる。
それでは、数年ぶりに電源を入れたラズパイとの再会から、構築の記録を振り返っていきます!
いきなり壁!ネットにつながらないラズパイ
久々にラズパイの電源を入れてみると、HDMI出力は問題なく、デスクトップ画面も起動。
いざネットに接続しようとすると…
あれ?Wi-Fiに繋がらない?
→ そもそもIPアドレスが振られてない!?

久々に触るラズパイだったので、何が起きているかすぐには把握できず、しばらく悩みました。
調べてみると、どうやら過去に設定していた固定IPアドレスが悪さをしていたようです。
/etc/dhcpcd.conf
このファイルを開いてみると、見覚えのある static ip_address=
の設定が…。
そういえば、仕事でNWの技術検証をしていた際に、固定IPに設定したままでした。
固定IPの設定しなおし
ということで、固定IPの設定をし直しました。
有線は使わないので、とりあえず置いといて、無線(wlan0)の設定を以下のようにしました。

interface eth0
static ip_address=192.168.1.100/24
static routers=192.168.1.1
static domain_name_servers=192.168.1.1
このあたりを修正して再起動したところ、無事ネットワーク接続に成功!
Wi-Fiでも有線でも、今度はきちんとIPアドレスが割り振られて、ラズパイがネット越しに操作できるようになりました。
SSHもVNCもOK!リモート操作可能にして快適構築
ネットワーク接続の問題が解決し、ラズパイがインターネットに繋がったら、次はお約束の準備作業。
そう、SSHとVNCの有効化です。
これを済ませておけば、モニターもキーボードもマウスも不要。
以降はすべて別のPCやスマホから、リモートで操作できるようになります。
ラズパイは1FのONUやルーターが置いてある棚に置きっぱにする予定です。
🔧 SSHの有効化
SSHはラズパイの遠隔操作の基本。
最近のRaspberry Pi OSでは、デフォルトで無効になっているため、ターミナル or GUIから手動で有効にします。
【GUIで有効化する場合】
- 設定 > RaspberryPiの設定を開く

- 「インターフェース」タブを開く
- 「SSH」を「有効」にする → OKで反映(ついでにVNCも有効にします)

【ターミナルで有効化する場合】
sudo raspi-config
→ Interfacing Options
→ SSH
→ Enable
を選択


🖥 VNCの有効化
GUIでラズパイを操作したい場合は、VNCが便利です。
VNC Viewer(RealVNCなど)からデスクトップ環境へリモート接続できます。
【raspi-configで有効化】
sudo raspi-config
→ Interfacing Options
→ VNC
→ Enable
これで、同一ネットワーク内からVNC Viewerで接続可能になります。
ログインユーザーとパスワードは、ラズパイ側の通常アカウントのものを使用します。
SSHとVNCの併用で快適リモート構築
この2つを有効にしておけば、
◯WindowsやMacのターミナルから ssh pi@ラズパイのIP
◯スマホやPCからGUIでVNC接続
といったように、同じNWであれば、どこからでも手軽に操作できる状態になります。
ターミナルだけで済む作業ならSSHでサクッと。
複雑なGUI設定が必要なときだけVNCでログイン、という使い分けもできて快適です。
準備が整ったところで、いよいよ今回の本命:TailscaleによるVPN構築→WOL実行に進んでいきます!
ポート開放不要!Tailscaleで安全に自宅へアクセス
ここからが今回の構築の主目的です。
外出先からラズパイに安全にアクセスできなければ、WOLも意味がないわけですが、ポート開放をするのはリスクも手間も多い…。そもそも我が家の回線はV6通信です。
そこで導入したのが、Tailscale(テイルスケール)です。
🛰 Tailscaleってなに?
Tailscaleは、【WireGuardベースのVPNを超簡単に構築できるサービス】です。
- ポート開放不要(= 自宅ルーターの設定不要)
- すべての通信が暗号化される
- 端末同士がプライベートネットワーク上で直接つながる
つまり、自宅にいるラズパイを、外出先のスマホやPCから操作できるようになります。
インストール手順(Raspberry Pi編)
ターミナルで以下のコマンドを実行:
curl -fsSL https://tailscale.com/install.sh | sh
インストール後、ログインして自分のTailscaleネットワークに追加:
sudo tailscale up
表示されるURLにブラウザでアクセスし、自分のGoogleアカウントなどでログイン → 認証完了
めっちゃ簡単。すごくハードルが低い!!
接続確認:外出先からでもSSHできる!
Tailscaleが有効化されたラズパイは、**Tailscaleの管理画面に表示される専用IPアドレス(100.xxx.xxx.xxx)**を持つようになります。
そのIPアドレスに対して、外出先から次のようにSSH:
ssh pi@100.xxx.xxx.xxx
これだけで、自宅のラズパイへVPN越しに安全に接続できるようになります!
しかも、Tailscaleはモバイルアプリ(iOS / Android)も用意されているので、スマホからでもラズパイを操作できます。
なぜTailscaleを選んだのか
- 自宅ルーターが「v6プラス」でポート開放できなかった
- DDNSやダイナミックDNSの設定が面倒
- 公開サーバにしたくなかった(セキュリティ面)
このような背景もあり、Tailscale一択でした。
これがあることで、自宅ラボのリモート操作が一気に現実的になりました。ミニPCには既に導入済みでしたが、ラズパイもTailscaleで接続されたことで夢が広がります
成功!ラズパイからミニPCを無事起動
いよいよ今回のゴール、外出先からラズパイ経由でミニPCをWake on LAN(WOL)で起動させるという実験にチャレンジです!
🔧 まずはWOLコマンドの準備
Raspberry Pi OS では、WOLパケット送信ツール wakeonlan
をインストールするだけでOKです。
sudo apt update
sudo apt install wakeonlan
あとは、対象のPC(Beelink SER5)のNICのMACアドレスさえわかれば準備完了です。
MACアドレスは、PCのネットワーク設定や ipconfig /all
(Windows)などで確認できます。
マジックパケットを送信!
Tailscaleでラズパイにログインした状態で、以下のコマンドを実行します
wakeonlan 00:11:22:33:44:55
しかし、うまく動かず。。。。ブロードキャストパケットがうまく到達してないみたい。ルーターの設定が原因かな??
と、いうことで次はipアドレス狙い撃ちにして実行します。(ミニPCのアドレスも固定にしました)
wakeonlan -i 192.168.1.2 00:11:22:33:44:55
※MACアドレスは実際の値に置き換えてください
起動成功の瞬間!
コマンド実行後、数秒…
う、動くぞ・・・
「カチッ…ウィィィン……」
ディスプレイにBIOSロゴが表示され、ミニPCが立ち上がる!!
いやあ、これはちょっと感動モノです。
外出先から安全にアクセスし、常時電源ONにしていなかったミニPCを必要なときだけ起動できるようになった瞬間でした。
WOL成功のポイント整理
要素 | 条件 |
---|---|
ミニPCのBIOS設定 | Wake on LANを有効化(オンボードNIC設定も) |
ミニPCの電源状態 | シャットダウン or スリープ(完全にコンセント抜くのはNG) |
ネットワーク | 有線LAN推奨(WOLはWi-Fiでは基本不可) |
ラズパイ | 常時起動・LAN接続、Tailscale経由でアクセス可能 |
今回の構成まとめ&学び
ここまでで、外出先からラズパイを経由して、自宅のミニPCをWOLで起動できる環境が完成しました。
試行錯誤の末、うまくいった構成をここで一度整理しておきます。

構築にあたり気づいたこと・学び
項目 | 気づき・学び |
---|---|
Synology NAS | スクリプト実行など自由度が低く、WOLにはやや不向き(モデルによる) |
ラズパイ | 小型・省電力で常時起動に向いており、WOL中継には最適 |
IPアドレス設定 | 放置していたラズパイはまずネットワーク設定の確認から |
Tailscale | 導入が非常に簡単で、ポート開放不要。安定性も高い |
有線LAN接続 | WOLはWi-Fiでは基本不可。有線接続が大前提 |
これで「外出先からミニPCを起動できる仕組み」が整ったわけですが、実はこのラズパイ、まだまだ活用の余地がありそうなんです。
ということで、最後に「今後やってみたいこと」についても少しだけ触れてみたいと思います!
おまけ:ここから広がるラボ計画
今回のWOL構築を通じて、長らく放置していたラズパイが見事に戦力復帰したわけですが、
いざ使ってみると「これ、もっといろいろ活用できるのでは?」と欲が出てきました。
🔧 ラズパイで今後やってみたいこと
ここからは「ミニPCの電源を入れるだけ」にとどまらず、
もっと広がる“ラボ計画”として、やってみたいことをいくつか挙げてみます。
自宅ラボ監視用にZabbix導入
- ラズパイをZabbixサーバにして、ミニPCやNASの稼働状況をモニタリング
- CPU温度、ネットワーク帯域、起動ログなどを可視化
ラズパイをTailscaleゲートウェイ化し、自宅LAN全体にアクセス
- ラズパイを サブネットルーター(Subnets Router) に設定
- 外出先から Tailscale 経由で NAS、プリンタ、家族のPCなど 自宅LAN配下の全機器にアクセス可能 に
- 例:
- 外から NAS にファイルアクセス
- 家庭内Webカメラの映像確認
- テストサーバへのSSH接続 など
- メリット:NASや他機器にTailscaleを直接インストールする必要がない
Tailscale + HTTPSリバースプロキシで「自宅API公開」
- 自宅のNASや自作Webアプリに外出先からHTTPSアクセスできるようにする
Caddy
やnginx
をラズパイに立てて、HTTPSリバースプロキシを構築- TailscaleのHTTPS公開機能(Funnel)を使えば、
→ 自宅にグローバルIP不要で外部公開可能!
例:
- 自作ToDoアプリに外からアクセス
- 自宅NASのファイルブラウザをスマホから閲覧・操作
- お遊びでChatGPTのAPIフロントをホストしてみる
ラズパイ × GPT 自宅AI執事システム
- 音声認識 → ChatGPT API → 音声合成 までをラズパイ単体で処理
- 「おはよう、今日の予定は?」→「おはようございます。今日は11時にミーティングがあります」
- 自宅ラボの状況(CPU温度や稼働台数)を自然言語で返答するようにもできる
必要技術:
- Whisper or Google Speech-to-Text(音声入力)
- OpenAI API
- voicevoxやOpen JTalk(音声出力)
素人の私が思いつくのはこんな感じです。なにか面白そうなアイディアがあれば教えて下さい!!
ラズパイが自宅ラボのハブになる日
最初は「WOLの中継役」だったラズパイが、今やラボのネットワーク制御・監視・操作の中心へと進化しつつあります。
今回の構築が、その第一歩となりました。
仕事に資格の勉強に育児に食べ歩きにと非常に忙しいのですが、隙間を見て色々とラズパイを触ってみたいと思います。
以上、簡単ですがラズパイでついに成功!Wake on LAN挑戦記・後編 ~眠っていたRaspberry Piが大活躍でした〜
今回使用した機材達
ラズパイは現在は5が最新モデルとなります。(スペックが向上しましたが、発熱も凄いらしいので用途に合わせてお選びください)
コメントを残す